
結論:リスキリングの費用負担は、国の補助金で軽減できる
結論から、はっきりと述べる。「リスキリングをしたいが、費用がかかるから踏み出せない」という悩みを抱える氷河期世代は、決して少なくないだろう。しかし、教育訓練給付金という制度を活用すれば、受講費用の一部、専門実践教育訓練であれば、最大80%、年間上限64万円までが、支給される。この制度を知らずに、自己資金だけでリスキリングを諦めてしまうことは、極めてもったいない機会損失だ。
本記事では、教育訓練給付金の3つの区分と、それぞれの給付率データを整理しながら、氷河期世代が、リスキリング補助金を最大限に活用するための、具体的な方法を、実践的に解説していく。
| 区分 | 給付率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 一般教育訓練 | 20% | 10万円 |
| 特定一般教育訓練 | 40%(雇用継続で50%) | 20万円(雇用継続で25万円) |
| 専門実践教育訓練 | 50%(雇用継続で70%、賃金上昇で80%) | 年間40万円(条件達成で最大64万円) |
教育訓練給付金、3つの区分を理解する
教育訓練給付金は、講座のレベルに応じて、3つの区分に分かれている。最も基本的な「一般教育訓練」は、簿記やTOEICなど、幅広い講座が対象で、受講費用の20%、上限10万円が支給される。次に「特定一般教育訓練」は、資格取得を目的とした、より専門性の高い講座が対象で、給付率は40%、上限20万円だ。さらに、修了から1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合、給付率は50%、上限25万円まで引き上げられる。
最も給付率が高いのが「専門実践教育訓練」だ。看護師や介護福祉士、大学院での学び直しなど、より長期的で専門性の高い講座が対象になり、給付率は50%、年間上限40万円が、6ヶ月ごとに支給される。さらに、修了から1年以内に雇用された場合は70%、修了後の賃金が受講開始前と比較して5%以上上昇した場合には、80%、年間上限64万円まで、引き上げられる。
図1:教育訓練給付金、区分別の給付率比較
出典:厚生労働省「教育訓練給付制度」を基に作成
賃金上昇という条件が、リスキリングへの動機づけになる
当サイトの別記事でも紹介した通り、専門実践教育訓練の給付率が、賃金上昇によって80%まで引き上げられるという制度設計は、単なる補助金にとどまらない、重要な意味を持っている。国は、「学び直しを行った結果、実際に賃金が上昇したかどうか」を、給付率に、直接反映させる仕組みを作ることで、リスキリングが、実際の収入増につながることを、強く後押ししている。
この制度設計を、「単に受講費用を補助してもらう」という受け身の発想でとらえるのではなく、「学び直しによって、実際に賃金を上げる」という、明確な目標設定の後押しとして、活用してほしいと考えている。給付率の引き上げという、具体的なインセンティブがあることで、リスキリングへの取り組みに、より緊張感と目的意識を持たせることができる。
- 教育訓練給付金の存在を知らず、自己資金だけで諦めてしまう
- 「手続きが面倒そうだ」という思い込みで、利用を見送ってしまう
- 対象講座を検索し、給付率を確認した上で、申請する
- 賃金上昇という条件を意識し、成果につなげる
教育訓練給付金を活用する、具体的な3ステップ
ここからは、教育訓練給付金を活用するための、具体的なステップを紹介する。
専門実践教育訓練の対象講座、押さえておきたい選択肢
専門実践教育訓練の対象講座には、看護師、介護福祉士、社会福祉士といった、国家資格の取得を目指す講座から、大学院での学び直し、専門学校での職業実践専門課程まで、幅広い選択肢が含まれている。氷河期世代にとって、これらの資格は、当サイトの別記事でも紹介している通り、人手不足が深刻な業界における、就職・転職の武器になり得る。
リスキリングを検討する際、単に「興味があるから」という理由だけでなく、その資格や講座が、実際にどれだけの給付率の対象になり、かつ、転職市場でどれだけ評価されるかを両面から検討することをおすすめしたい。給付率の高さと、転職市場での評価の高さが、重なる分野を選ぶことが、最も効率的なリスキリング戦略になる。
| 分野 | 特徴 |
|---|---|
| 看護師・准看護師 | 人手不足が深刻で、資格取得後の需要が高い |
| 介護福祉士・社会福祉士 | 高齢化を背景に需要が続く |
| 専門学校の職業実践専門課程 | IT・デザイン等、実務直結型のスキルを習得できる |
| 大学院での学び直し(MBA等) | マネジメント層としての専門性を強化できる |
教育訓練給付金を活用し、キャリアを転換した実例
ここで、教育訓練給付金を活用し、キャリアを転換した人物の実例を紹介したい。この人物は、40代の頃、非正規雇用の職を転々としてきた経験から、「安定した専門職に就きたい」という思いを、長年抱いていた。しかし、資格取得のための学費が、大きな障壁になっていたという。
ある時、当サイトが伝えるような教育訓練給付金の存在を知り、ハローワークで自分自身の受給資格を確認したところ、専門実践教育訓練の対象になることが分かった。「受講費用の半分以上が、給付金で戻ってくると知った時は、正直、驚いた。これなら挑戦できると、背中を押された」と、この人物は振り返っている。
その後、介護福祉士の資格取得を目指す講座に通い、修了後、実際に介護施設への就職が決まった。「雇用保険の被保険者として就職できたことで、給付率がさらに引き上げられ、実質的な自己負担は、想定よりもはるかに少なく済んだ」と、この人物は、語っている。
資格取得の学費が障壁に
安定した専門職への転換を、長年、諦めていた。
教育訓練給付金の対象だと確認
受講費用の半分以上が戻ってくると、はっきりと理解した。
資格取得後、専門職へ就職
給付率の引き上げも受け、堅実に負担を抑えられた。
教育訓練給付金以外の、あわせて活用できる支援制度
当サイトの別記事でも紹介した通り、教育訓練給付金以外にも、氷河期世代が活用できる支援制度は、いくつか存在する。求職者支援制度は、雇用保険を受給できない人を対象に、無料の職業訓練と、一定の条件のもとで、月10万円の給付金を、あわせて提供する制度だ。また、自治体によっては、独自のリスキリング支援策を実施しているケースもある。
教育訓練給付金だけにとどまらず、これらの制度もあわせて、情報収集しておくことをおすすめしたい。複数の制度を組み合わせることで、リスキリングにかかる実質的な負担を、さらに抑えられる可能性がある。
働きながら学ぶ、時間の作り方という現実的な課題
教育訓練給付金という制度を活用できることが分かっても、実際にリスキリングを継続する上で、多くの人が直面するのが「時間の確保」という、現実的な課題だ。本業を続けながら、資格取得のための講座に通う、あるいはオンライン講座で学習を進めることは、決して簡単なことではない。この時間の課題を軽視せず、計画を立てた上で、リスキリングに取り組むことをおすすめしたい。
具体的には、通勤時間や、休日の一部を、学習時間として、あらかじめ確保しておく仕組み作りが有効だ。近年は、オンラインで受講できる講座も、増えており、通学の負担を抑えながら、専門実践教育訓練の対象講座を受けられるケースも、少なくない。時間の確保が難しいという理由だけで、リスキリングを諦めるのではなく、通学形式かオンライン形式かも含めて、自分自身のライフスタイルに合った講座を選ぶことをおすすめしたい。
| 講座形式 | 特徴 |
|---|---|
| 通学形式 | 対面での指導が受けられる一方、時間の制約が大きい |
| オンライン形式 | 通勤・移動の負担がなく、隙間時間を活用しやすい |
| ハイブリッド形式 | 実技等は対面、座学はオンラインと使い分けられる |
家族の理解を得ながら、リスキリングを進める
当サイトの別記事でも紹介した通り、リスキリングは、本人の時間と労力だけでなく、家庭内での家事や育児の分担にも、影響を及ぼす取り組みだ。特に、専門実践教育訓練のように、長期間にわたる学び直しを検討する場合、家族の理解と協力が得られるかどうかが、継続できるかどうかを、大きく左右する。
リスキリングを始める前に、家族に対して、給付金による費用負担の軽減効果や、資格取得後のキャリアの見通しを、具体的な数字とともに、共有しておくことをおすすめしたい。「なぜ、今、この学び直しに取り組む必要があるのか」を、家族が納得できる形で説明できれば、家事・育児の分担についても、協力を得やすくなる。
- リスキリングの目的や見通しを、家族に説明しないまま始める
- 学習時間の確保をめぐり、家庭内で摩擦が生じてしまう
- 給付金の効果やキャリアの見通しを、具体的に説明する
- 家事・育児の分担について、事前に話し合っておく
SNSで飛び交う言説への反論
よくある質問
Q. 教育訓練給付金は、誰でも利用できるのか?
A. 雇用保険の被保険者期間など、一定の要件を満たす必要がある。まずハローワークで、自分自身の受給資格を確認することをおすすめしたい。
Q. 対象講座は、どこで確認できるか?
A. 厚生労働省の「教育訓練給付制度 検索システム」で、約17,000の対象講座を検索できる。
Q. 専門実践教育訓練を受ける際、必ず必要な手続きはあるか?
A. 受講開始前に、ジョブ・カードを用いたキャリアコンサルティングを受けることが、原則として必須になる。
Q. 給付金は、いつ、どのように支給されるのか?
A. 一般教育訓練は修了後にまとめて支給される一方、専門実践教育訓練は、6ヶ月ごとに、分割して支給される仕組みになっている。
Q. 教育訓練給付金以外に、あわせて活用できる制度はあるか?
A. 求職者支援制度や、自治体独自のリスキリング支援策なども存在する。複数の制度を組み合わせることをおすすめしたい。
Q. 働きながらリスキリングを続けるコツはあるか?
A. オンライン形式の講座を活用し、通勤時間や休日の一部を、あらかじめ学習時間として、確保しておくことが有効だ。
Q. 家族の理解を得るには、何を伝えるべきか?
A. 給付金による費用負担の軽減効果と、資格取得後のキャリアの見通しを、具体的な数字とともに、共有することをおすすめしたい。
リスキリング補助金を活用する上で意識したい3つの視点
リスキリング後の転職活動を、あらかじめ見据える
教育訓練給付金を活用して資格を取得すること自体は、あくまでリスキリングの通過点であり、最終的なゴールではない。講座に申し込む段階から、資格取得後、具体的にどの業界・職種への転職を目指すのかをイメージしておくことをおすすめしたい。資格取得後の進路を明確にしないまま学び直しを進めてしまうと、せっかく取得した資格が、実際の転職活動で十分に活かされないまま終わってしまう恐れがある。
当サイトの別記事でも紹介した通り、資格取得と並行して、転職エージェントへの登録や、業界研究を進めておくことも有効だ。資格取得のタイミングと、転職活動の本格化のタイミングをすり合わせておくことで、給付金による費用面の後押しと、転職市場での評価向上という、2つの効果を、無駄なく最大化できる。
結論:知っているかどうかが、差を生む
専門実践教育訓練の給付率は、最大80%、年間上限64万円にまで達し、対象講座は約17,000にのぼる。この制度を知らずに、自己資金だけでリスキリングを諦めることは、極めてもったいない機会損失だ。受給資格の確認、対象講座の比較検討、そして賃金上昇という成果への結びつけ——この3つを実践することが、氷河期世代の学び直しを、確かな成果につなげる鍵になる。
今日からできる第一歩として、最寄りのハローワークで、自分自身の教育訓練給付金の受給資格を、一度確認してみてほしい。その小さな確認作業こそが、キャリア転換への、確かで力強い出発点になるはずだ。