
結論:1985〜1986年生まれは、どちらの定義にも収まりにくい
結論から述べる。ロスジェネの一般的な定義(狭くは1975〜1984年生まれ、広くても1985年生まれ前後まで)と、ゆとり世代の一般的な定義(1987年〜2004年生まれ前後、あるいは2002年度以降の学習指導要領を受けた世代とする立場では1990年代生まれ以降)を比較すると、1985年〜1986年生まれは、いずれの定義にもすっきりとは収まらない、狭間の生まれ年に位置していることが分かる。
| 世代呼称 | 対象生まれ年(目安) | 2026年時点の年齢 |
|---|---|---|
| ロスジェネ(狭い定義) | 1975〜1984年生まれ | 42〜51歳 |
| 狭間世代 | 1985〜1986年生まれ | 40〜41歳 |
| ゆとり世代(狭い定義) | 1987〜1996年生まれ前後 | 30〜39歳 |
この狭間世代は、氷河期世代の高卒基準(1974〜1987年生まれ)には含まれるものの、より狭いロスジェネのコア定義や、ゆとり世代の中核的な定義からは、どちらも外れやすい位置にある。「氷河期世代の年少組」なのか「ゆとり世代の年長組」なのか、判断が分かれやすい、興味深いポジションだと言える。
図1:ロスジェネ・狭間世代・ゆとり世代の生まれ年マップ
出典:各種メディアでの使用実態を基に、当サイトが概念的に整理したもの
狭間世代が経験した、教育制度の過渡期
1985年〜1986年生まれの世代は、教育制度の観点からも興味深い位置にある。「ゆとり教育」の学習指導要領が本格的に施行されたのは2002年度からであり、この世代が小中学校に通っていた時期は、旧来の詰め込み教育から、ゆとり教育への移行期にあたる。つまりこの世代は、「ゆとり教育を全面的に受けたわけではないが、旧来の教育とも完全には一致しない」という、教育制度上の過渡期を経験した世代でもある。
就職活動の面でも、この世代は独特の位置にある。大学をストレート卒業した場合、標準的な卒業年は2007年〜2009年前後となり、氷河期本体の回復期〜売り手市場のピークを経て、リーマンショック直撃という、劇的な環境変化を経験した世代だ。入学時・卒業時で全く異なる労働市場の様相を見てきた、という点でも特異な世代だと言える。
| 生まれ年 | 標準的な大卒卒業年 | 当時の求人環境 |
|---|---|---|
| 1985年生まれ | 2007〜2008年卒 | 売り手市場のピーク |
| 1986年生まれ | 2008〜2009年卒 | リーマンショックの影響が及び始める時期 |
- 1985〜1986年生まれを、無条件にロスジェネかゆとり世代のどちらかに分類する
- この世代の教育・就職環境の過渡期性を無視する
- 「狭間世代」という独自の位置づけの存在自体を見落とす
- 1985〜1986年生まれが、両方の定義の狭間に位置することを理解する
- 教育制度・就職環境ともに、過渡期を経験した独自性を認識する
- どちらの世代論にも、部分的に重なる特徴を持つことを踏まえる
就職氷河期の「終盤組」としての狭間世代
狭間世代を、氷河期世代の枠組みの中で捉え直すと、この世代は「氷河期の終盤組」という、また別の顔を持つことが分かる。当サイトの他記事でも解説している通り、大卒求人倍率は2008年卒でピーク(2.14倍)を迎え、その後リーマンショックの影響で急落する。狭間世代の標準的な大卒卒業年(2007年〜2009年)は、まさにこの「ピークとその直後の急落」を、身をもって経験した時期にあたる。
この意味で、狭間世代は「氷河期の出口を見た最後の世代」であると同時に、「新しい形の就職難(リーマンショック後の低迷)の入り口を経験した最初の世代」でもある、二重の顔を持っている。この独特のポジションは、氷河期世代の「終わり」と、その後の「新しい試練の始まり」を、どちらも当事者として体感してきたという点で、極めて示唆に富む立ち位置だと言える。
| 生まれ年 | 大卒卒業年 | 経験した局面 |
|---|---|---|
| 1985年生まれ | 2007〜2008年卒 | 氷河期の出口・売り手市場のピーク |
| 1986年生まれ | 2008〜2009年卒 | リーマンショックによる急落の始まり |
狭間世代のキャリア形成における独自の課題
狭間世代がキャリアを歩み始めた2007年〜2009年前後は、売り手市場からリーマンショック後の不況へという、極めて急激な環境変化のただ中にあった。この急激な変化は、入社時期がわずか1〜2年違うだけで、その後のキャリア形成に大きな差を生んだ可能性がある。2007年〜2008年に売り手市場の恩恵を受けて入社した人と、2009年前後に入社し、いきなり業績不振企業でのキャリアスタートを強いられた人とでは、その後のキャリアパスに明確な違いが生じたと考えられる。
この現象は、本サイトの他記事で紹介しているバブル世代と氷河期世代の間に生じた「わずか1〜2年の生まれ年差による明暗」と、構造的に酷似している。歴史は形を変えて繰り返すという言葉があるが、狭間世代が経験したこの急激な環境変化も、日本の新卒一括採用システムが持つ、構造的な脆弱性を改めて浮き彫りにする事例だと言えるだろう。
狭間世代が果たしうる、世代間の「橋渡し」の役割
狭間世代は、職場において、氷河期世代の上司・先輩と、ゆとり世代・Z世代の後輩の両方と、それぞれ比較的近い距離感でコミュニケーションを取れる、稀有な立場にあることが多い。氷河期世代が経験した「厳しい競争環境で生き抜く」という価値観と、ゆとり世代・Z世代が持つ「ワークライフバランスを重視する」という価値観、その両方に一定の理解を示せることは、組織の中で世代間の摩擦を緩和する、貴重な役割を果たしうる。
この「橋渡し役」としての価値は、狭間世代自身が意識的に自覚し、活用していく価値のある強みだ。どちらの世代にも完全には属さないという曖昧さを、弱みとしてではなく、両方の視点を持つ独自の強みとして、積極的に再定義していくことをお勧めしたい。
「ゆとり世代」の定義自体にも、実は幅がある
本記事のテーマを深掘りする上で見落とせないのが、「ゆとり世代」という言葉自体にも、ロスジェネと同様に、複数の定義が存在するという事実だ。最も狭い定義では、2002年度の学習指導要領改訂の影響を最も強く受けた1987年〜1996年生まれ前後を指すが、より広い定義では、ゆとり教育が部分的に導入され始めた1980年代後半から、完全に脱ゆとりに移行する前の2004年生まれ前後まで、対象を広げて使われることもある。
この「ゆとり世代」定義の幅もまた、狭間世代の位置づけを一層複雑にしている。広い定義のゆとり世代を採用すれば、1985年〜1986年生まれも、ゆとり世代の年長組として含まれる余地が生まれる。逆に狭い定義を採用すれば、この生まれ年は明確にゆとり世代の範囲外になる。つまり、狭間世代が「ゆとり世代に含まれるか」という問い自体、参照する定義次第で答えが変わる、二重の不確実性を抱えていることになる。
| 定義 | 対象生まれ年 | 1985〜1986年生まれの該当 |
|---|---|---|
| 狭い定義 | 1987〜1996年生まれ前後 | × 非該当 |
| 広い定義 | 1985〜2004年生まれ前後 | ○ 該当(年長組) |
狭間世代の親世代・上司世代との関係
狭間世代(1985〜1986年生まれ)の親世代は、多くの場合バブル世代(1965〜1970年生まれ前後)にあたる。また、社会人になりたての時期に接した上司・先輩世代は、氷河期世代の中核層であることが多い。つまり狭間世代は、「バブル世代の子」として育ち、「氷河期世代の背中を見て」社会人としての第一歩を踏み出した世代でもある。
この重層的な世代間関係は、狭間世代の価値観形成にも独特の影響を与えている可能性がある。親世代からはバブル期の成功体験の名残を、職場の先輩世代からは氷河期世代の危機意識を、それぞれ異なる形で受け継ぎながら育ってきたこの世代は、複数の異なる時代感覚を、自分の中に併せ持つ、稀有な立場にあると言えるだろう。
さらに、狭間世代の中には、氷河期世代の兄・姉を持つ人も少なくない。家庭の中で、兄弟姉妹の就職活動の苦労を間近で見てきた経験は、狭間世代自身の就職観・キャリア観の形成にも、一定の影響を与えた可能性がある。「兄・姉の代は苦労していたが、自分の代は多少マシだった」という体感を持つ人がいる一方で、後述するようにリーマンショックの直撃を受けた人にとっては、必ずしもそうとは言い切れない側面もある。
狭間世代が持つ「両属性」を、逆に武器にするという発想
ここまで見てきたように、狭間世代は「氷河期世代でもゆとり世代でもない、宙ぶらりんな存在」として語られがちである。しかし、このサイトが一貫して主張している通り、時代のせいにして立ち止まっていても何も変わらない。むしろ、二つの世代の特性を併せ持つという事実を、積極的に武器として使い倒すという発想こそが、狭間世代にとって最も生産的な選択だろう。
氷河期世代の「危機意識」「自己責任で何とかするしかないという覚悟」と、ゆとり世代以降の「効率重視」「ワークライフバランスへの意識」「デジタルツールへの適応力」を、両方とも自分の中に持っているというのは、見方を変えれば大きなアドバンテージである。どちらか一方の価値観に偏るのではなく、状況に応じて両方の思考モードを使い分けられるという柔軟性は、狭間世代ならではの武器になり得る。
氷河期世代の上司世代からは「危機感を持って自ら動く姿勢」を学び取りつつ、ゆとり世代以降の後輩からは「無駄な根性論を排して効率的に成果を出す発想」を吸収する。この両方を橋渡しできる位置にいることは、単なる「狭間」ではなく、組織の中で独自の価値を発揮できるポジションだと捉え直すべきだろう。上司にも部下にも「話が通じる」人材は、どの職場でも重宝される。
重要なのは、この立ち位置を「損な役回り」と捉えるか、「両方の良いところを取れる得なポジション」と捉えるかという、本人の解釈の仕方である。同じ状況でも、解釈次第で行動は大きく変わる。「自分は狭間世代だから損をしている」と嘆いて思考停止するのではなく、「自分は二つの世代の橋渡しができる稀有な存在だ」と捉え直し、実際に行動へと移していく姿勢こそが、このサイトが繰り返し強調している「上昇志向」の本質である。
狭間世代と、その下の「ゆとり世代前半」との違い
狭間世代(1985〜1986年生まれ)と、ゆとり世代の中核層(1987年〜1990年代前半生まれ)を比較すると、就職活動時の環境という点でも、明確な違いが見えてくる。狭間世代が売り手市場のピークからリーマンショックへの急落を経験したのに対し、その数年後に社会に出たゆとり世代前半は、リーマンショック後の低迷期が定着した中で、最初から厳しい環境を前提に就職活動を行っている。
つまり狭間世代は「急激な環境の変化」を、ゆとり世代前半は「定着した厳しさ」を、それぞれ経験しているという違いがある。同じ「就職氷河期第二波」という括りの中でも、環境変化の「途中」を経験したか、変化が「定着した後」を経験したかによって、心理的な受け止め方には違いが生じた可能性がある。
| 世代 | 就職活動時の環境 | 環境変化の経験の仕方 |
|---|---|---|
| 狭間世代(1985〜1986年生まれ) | ピークから急落への移行期 | 変化の「途中」をリアルタイムで経験 |
| ゆとり世代前半(1987〜1990年生まれ前後) | 低迷が定着した時期 | すでに厳しい環境が「前提」として存在 |
SNSで飛び交う言説への反論
よくある質問
Q. 「狭間世代」に、公式な定義はあるのか?
A. ない。ロスジェネとゆとり世代、それぞれの一般的な定義の間に位置する生まれ年を、便宜的に指す概念として整理したものだ。
Q. 1985年〜1986年生まれは、氷河期世代の定義には含まれるか?
A. 高卒基準(1974〜1987年生まれ)には含まれるが、より狭いコア世代や大卒基準からは外れる。
Q. 狭間世代は、就職活動でどのような環境を経験したか?
A. 標準的な大卒卒業年は2007年〜2009年前後にあたり、売り手市場のピークからリーマンショックの影響が及び始める時期という、劇的な環境変化を経験している。
Q. 狭間世代は、教育制度上どのような位置づけか?
A. 「ゆとり教育」の本格施行(2002年度)以前の教育を主に受けており、ゆとり教育世代とは異なる教育背景を持つ。旧来の教育とゆとり教育の過渡期にあたる。
Q. 狭間世代は、職場でどのような役割を果たせるか?
A. 氷河期世代とゆとり世代・Z世代、双方の価値観に一定の理解を示せる立場にあり、世代間の橋渡し役として機能しうる。
Q. 「ゆとり世代」の定義にも幅があるのか?
A. ある。狭い定義では1987〜1996年生まれ前後、広い定義では1985年生まれ前後まで含めることもあり、ロスジェネと同様に、情報源によって想定年齢に違いがある。
Q. 狭間世代の親世代・上司世代は、どのような世代にあたるか?
A. 親世代は多くの場合バブル世代、社会人になりたての頃の上司・先輩世代は氷河期世代の中核層にあたることが多い。複数の世代の影響を重層的に受けてきた世代だと言える。
Q. 狭間世代とゆとり世代前半とでは、就職環境にどのような違いがあるか?
A. 狭間世代は売り手市場のピークからリーマンショックへの急落という「急激な変化」を経験したのに対し、その数年後に社会に出たゆとり世代前半は、すでに低迷が定着した環境を前提に就職活動を行っている点で異なる。
Q. 狭間世代は自分の立ち位置をどう捉えるべきか?
A. 「損な役回り」と嘆くのではなく、氷河期世代とゆとり世代・Z世代双方の価値観を理解できる稀有な立ち位置として、積極的に武器化していく発想が推奨される。曖昧な立場を嘆いて思考停止するより、行動に転じることが重要だ。
Q. 狭間世代は、氷河期世代の支援策の対象に含まれるのか?
A. 定義次第で対象に含まれる場合もあるが、そもそも世代限定の支援策自体、本サイトとしては不要という立場を取っている。生まれ年に関わらず、自ら行動し続ける姿勢こそが重要だ。
狭間世代として意識したい3つの視点
結論:狭間にいることは、弱みではなく独自の視点だ
1985年〜1986年生まれの狭間世代は、ロスジェネとゆとり世代、どちらの定義にもすっきりとは収まらない、独特の位置にいる。教育制度・就職環境の両面で過渡期を経験してきたこの世代は、既存の世代論の枠組みだけでは、正確に捉えきれない存在だ。
しかし、この「どちらにも属さない」という曖昧さは、決して弱みではない。氷河期世代とゆとり世代・Z世代、双方の価値観を理解できる、稀有な橋渡し役としての強みに転換できる。世代の帰属先を明確にすることにこだわるより、この独自のポジションを活かした行動に、意識を向けていってほしい。
2026年現在、狭間世代は40歳前後という、キャリアの中核を担う年代に達している。氷河期世代の危機意識と、ゆとり世代的な柔軟な発想、その両方を併せ持つこの世代が、今後どのようなキャリアを切り開いていくのか——それは、既存の世代論の枠組みだけでは予測しきれない、この世代ならではの、これからの可能性そのものだと言えるだろう。