
結論:氷河期世代は改善、若年層には新たな課題
結論から、はっきりと述べる。当サイトの別記事でも紹介した通り、氷河期世代の正規雇用率は、年齢とともに、回復してきている。一方で、ゆとり世代後半からZ世代にかけての若年層では、15〜24歳の正規社員数が、2025年時点で108万人にまで減少しているという、データがある。この対照的な推移を、感情論ではなく、データで冷静に検証していきたい。
本記事では、正社員率・不本意非正規率・離職率という、複数の指標を整理しながら、氷河期世代とゆとり世代・Z世代の雇用状況の違いを、具体的に解説していく。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 15〜24歳正規社員数(2025年) | 108万人 |
| 25〜34歳の不本意非正規率 | 12.7%(全世代平均超) |
| 大卒3年以内離職率(2022年3月卒) | 33.8% |
| 同、1987年3月卒 | 28.4% |
氷河期世代の「回復」の軌跡
氷河期世代の正規雇用率は、就職氷河期という厳しい入口を経ながらも、データを見る限り、年齢を重ねるとともに、改善してきた。20代前半の非正規雇用率が、ピークを記録した時期はあったものの、その後の転職やキャリア形成を通じて、氷河期世代全体の正社員率は、現在では、旧世代の水準にかなり接近していることが、当サイトの別記事でも紹介した通り、確認されている。
この「回復」の軌跡こそが、氷河期世代を、一律に「非正規だらけの世代」と決めつける、雑な言説に対する、最も説得力のある反証だと、考えている。
図1:世代別、正規雇用率の推移イメージ
出典:総務省「労働力調査」の各種データを基に作成
若年層に見る、「新しい形の不安定さ」
ゆとり世代後半からZ世代にかけての若年層は、氷河期世代とは、異なる形の雇用の不安定さに直面している。象徴的なのが、大卒者の3年以内離職率が、1987年3月卒の28.4%から、2022年3月卒の33.8%へと、上昇している事実だ。さらに、19歳以下の離職率は36.7%と、全世代平均の15.4%と比較して、2倍以上に達している。
この早期離職率の上昇に加えて、25〜34歳層の「不本意非正規率」が12.7%と、全世代平均を上回っている点にも、注目したい。不本意非正規率とは、正規雇用を望みながらも、やむを得ず非正規雇用に留まっている人の割合を指す、定義された指標だ。この数値の高さは、若年層が、単に「気軽に転職する」というポジティブな理由だけでなく、構造的な不安定さに直面していることを示唆している。
- 「今どきの若者は売り手市場で恵まれている」と、無条件に決めつける
- 不本意非正規率や離職率のデータを見ようとしない
- 不本意非正規率等、データで実態を把握する
- 氷河期世代とは異なる、課題の存在を認識する
15〜24歳正規社員数減少の背景分析
15〜24歳の正規社員数が、2025年時点で108万人にまで減少しているという、データの背景についても、整理しておきたい。この減少には、少子化による、若年人口そのものの減少という、人口動態上の要因が、大きく影響している。しかし、それだけでなく、企業側が、新卒一括採用という従来型の雇用慣行から、より多様な採用形態(中途採用重視、通年採用等)へと、シフトしていることも、あわせて影響していると分析されている。
この構造変化を、単に「若者の正社員が減っている」という、雑な表面的な理解で終わらせるのではなく、日本の雇用慣行全体が、大きく変化している過程の一部として、正しく捉えるべきだと考えている。この変化は、若年層だけでなく、氷河期世代を含む、あらゆる世代の働き方に今後も影響を与え続けるだろう。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 少子化 | 若年人口そのものの減少 |
| 採用形態の多様化 | 新卒一括採用からのシフト |
| 雇用慣行の変化 | 全世代に影響する、構造変化 |
氷河期世代の経験は、「先行事例」になり得る
氷河期世代は、日本社会で初めて、大規模かつ本格的な雇用の不安定化を直接経験した世代だ。この経験は、決して「割を食っただけ」の記憶ではなく、雇用が不安定化した社会を、どう生き抜くかという、知見の蓄積でもある。ゆとり世代・Z世代が、新たな形の雇用の不安定さに直面している今、氷河期世代が積み重ねてきた、この「先行事例」としての経験知は、極めて価値のあるものになり得る。
氷河期世代が、この経験知を、単なる苦労話としてではなく、体系化された形で、次の世代に伝えていくことを、強くおすすめしたい。当サイトの別記事で紹介した、資格取得やスキル言語化、転職市場の見極め方といったノウハウは、まさに氷河期世代が、厳しい環境の中で、培ってきた財産だ。
- 「自分たちだけが苦労した」と、経験を語らず終わらせる
- 若手への支援を行おうとしない
- 雇用不安定化を生き抜く知見を体系化する
- 若手世代に前向きに伝える
データの理解を、行動へとつなげた実例
ここで、若年層の雇用データを自らのマネジメントに活かした人物の実例を紹介したい。この人物は、40代の管理職で、部下であるZ世代の早期離職に、当初、頭を悩ませていたという。「今どきの若者は根性がないと、考えていた」と振り返っている。
しかし、不本意非正規率や離職率のデータに触れたことで、「若手の離職は、根性の問題ではなく、正社員としての安定を求める、切実な動機による部分が大きいと気づいた」という。「採用時の期待値のすり合わせや、キャリアパスの提示を意識的に行うようになった」と語っている。
結果として、この人物のチームでは、若手の定着率が、改善したという。「データを見ることで、感情的な決めつけから、対策へと発想が変わった」と、この人物は締めくくっている。「一方的な理解ではなく、対話の積み重ねこそが、真の解決策になると実感した」とも語っている。
若手の離職を根性不足と捉える
データの確認なく、印象論で判断していた。
不本意非正規率等のデータを理解
若手の切実な動機を認識した。
キャリアパスの提示で定着率改善
データに基づく対策が、成果を生んだ。
データを活かす3つの視点
採用市場の変化が、両世代にもたらすチャンス
新卒一括採用から、より多様な採用形態へのシフトが、実は氷河期世代にとっても、チャンスになり得ることを指摘しておきたい。従来の日本型雇用慣行では、「新卒でのスタート」が、極めて重視され、中途採用者や、キャリアに空白のある人材は、不利になりやすかった。しかし、通年採用や、経験者採用の重視といった、変化は、年齢やキャリアの経路に関わらず、実力で評価される機会を増やしている。
この採用市場の構造変化を、氷河期世代が、積極的に活用すべきだと考えている。当サイトの別記事で紹介した通り、40代以上の転職成功率は、データで見ても、上昇している。この背景には、まさにこうした採用市場全体の構造変化が、大きく影響していると考えられる。
| 変化 | 影響 |
|---|---|
| 通年採用の拡大 | 年齢に関わらず、応募機会の増加 |
| 経験者採用の重視 | 氷河期世代の実務経験が、評価されやすくなる |
| 新卒一括採用の相対的縮小 | キャリアの多様性への許容度向上 |
職場における、世代間メンタリングの実践
氷河期世代が、実際の職場において、世代間メンタリングを、具体的に実践できることを、あらためて提案しておきたい。不本意非正規率の高さや、早期離職率の上昇に直面する若年層に対して、氷河期世代が、自らの経験に基づいた、助言を提供することは、双方にとって価値のある関わり方になる。特に、非正規雇用から正規雇用への移行という、氷河期世代自身が、実際に乗り越えてきた経験は、極めて実践的な知見だ。
こうしたメンタリングを、単なる善意のボランティアとしてではなく、自らのキャリアにもプラスに働く、戦略的な活動として位置づけることをおすすめしたい。若手育成の実績は、管理職としての評価にも、直接的につながる、資産になる。
SNSで飛び交う言説への反論
よくある質問
Q. 不本意非正規率とは、具体的に何を指すのか?
A. 正規雇用を望みながらも、やむを得ず非正規雇用に留まっている人の割合を指す、定義された指標だ。総務省の労働力調査で、毎年公表されている。年齢層ごとの内訳も、確認できる。
Q. 氷河期世代の正社員率は、本当に改善しているのか?
A. 公的統計データによれば、年齢とともに、改善してきていることが確認されている。当サイトの別記事でも、この推移データを詳しく紹介している。世代内の個人差は大きいが、全体の傾向としては明確だ。
Q. なぜ大卒3年以内離職率は、上昇しているのか?
A. 複数の要因が、考えられるが、雇用のミスマッチや、キャリア観の変化が、影響していると分析されている。入社前の情報提供の不足も、一因として指摘されている。
Q. 若年層の雇用状況は、今後どうなっていくのか?
A. 人手不足の深刻化により、条件面での改善が進む可能性がある一方、質的な課題は残ると見込まれる。企業側の意識改革も、鍵になる。
Q. 氷河期世代は、若年層の課題にどう向き合うべきか?
A. 自らの経験を前向きな指導・支援へと転換していくことが、建設的な向き合い方になる。上から目線ではなく、対等な立場での対話が効果的だ。
Q. 世代間の雇用状況を比較すること自体に、意味はあるのか?
A. 優劣をつけるためではなく、実態把握と、相互理解のために、意味がある。データに基づく比較は、感情的な対立を防ぐ効果もある。政策議論の土台としても、活用できる。
Q. この記事のデータは、どこで確認できるのか?
A. 総務省「労働力調査」や、厚生労働省の各種調査で、定期的に公表されている。
Q. 15〜24歳の正規社員数減少は、少子化だけが原因なのか?
A. 少子化が主要因だが、採用形態の多様化という、構造変化も、あわせて影響している。企業の採用戦略の変化も、見逃せない要因の一つだ。今後も、注視が必要になるだろう。
Q. 若手へのメンタリングは、どう始めればよいか?
A. まずは、先入観なく話を聞く姿勢から始めるとよい。押し付けではなく、対話を重視することが重要だ。定期的な1on1の機会を設けることも、効果的だ。無理に結論を急がないことも大切だ。
結論:比較ではなく、相互理解を積み重ねよう
氷河期世代の正社員率は、データを見る限り、改善してきている。一方、ゆとり世代・Z世代は、氷河期世代とは異なる形の構造的な雇用の不安定さに直面している。どちらが辛いかを競うのではなく、それぞれの世代の実態をデータで正確に理解し合うことこそが、建設的な一歩になる。
今日からできる第一歩として、もし部下や後輩にZ世代がいるなら、彼らの雇用状況について、一度先入観なく話を聞いてみてほしい。その小さな対話こそが、世代を超えた、相互理解への出発点になるはずだ。
氷河期世代が積み重ねてきた、雇用の不安定さを生き抜く経験知が、次の世代にとって、極めて価値のある資産であることを、あらためて強調しておきたい。世代間の優劣を競うのではなく、それぞれが直面してきた、そして直面している困難を認め合い、知見を共有し合うこと。それこそが、データと行動に基づいた、建設的な世代間関係の姿だ。氷河期世代が培ってきた強さとしなやかさを誇りを持って、次の時代へとつないでいってほしい。