
結論:暗号資産は「否定も肯定も」データで判断すべきだ
結論から、はっきりと述べる。ビットコインをはじめとした暗号資産に対しては、「絶対に儲かる」という煽り情報と、「ギャンブルと同じで危険だ」という全否定の意見が、SNS上で常に対立している。しかし、こうした極端な意見のどちらにも、安易に流されるべきではない。ビットコインの日次リターンのボラティリティは、約3.3%と、米国の代表的な株価指数であるS&P500の約1.4%と比較して、明確に高い水準にある。この事実は、暗号資産が「危険」であることの証拠ではなく、「価格変動が大きい資産クラスである」という、客観的な特性を示しているに過ぎない。
本記事では、こうした客観的なデータに基づき、氷河期世代が、暗号資産とどう向き合っていくべきかを、冷静に解説していく。
| 資産 | 日次リターンのボラティリティ(目安) |
|---|---|
| ビットコイン | 約3.3% |
| イーサリアム | 約4.3% |
| 米国株価指数S&P500 | 約1.4% |
ボラティリティの高さが意味すること
ボラティリティとは、価格の変動率、つまり振れ幅の大きさを示す指標だ。ボラティリティが高いということは、短期間で価格が大きく上昇する可能性がある一方、同じように大きく下落する可能性も、あわせて持っているということを意味する。この特性を正確に理解しないまま、「大きく増える可能性がある」という側面だけに注目して、暗号資産に資金を投じてしまうことは、極めてリスクの高い行動だと言わざるを得ない。
ボラティリティの高さは、投資期間によっても、受け止め方が変わってくる。短期的な売買を前提とすれば、ボラティリティの高さは、大きな損失につながるリスクをはらむ一方、長期保有を前提とすれば、短期的な価格の上下動は、あくまで通過点として捉えることもできる。暗号資産に投資する場合、短期的な売買よりも、長期的な視点を持つことを、繰り返しおすすめしたい。
一方で、この高いボラティリティを、感情的に「危険だから絶対に触るべきではない」と、全面的に否定することも、必ずしも合理的な態度だとは考えていない。重要なのは、この特性を正確に理解した上で、自分自身の資産全体の中で、どの程度の割合を、この高ボラティリティな資産クラスに配分するのが適切かを、冷静に判断することだ。
図1:資産クラス別、日次リターンのボラティリティ比較
出典:各種調査データを基に作成
実際の利用者データが示す、意外に堅実な実態
暗号資産と聞くと、一攫千金を狙う投機的な取引のイメージが強いかもしれないが、実際の利用者データを見ると、意外に堅実な実態が浮かび上がってくる。国内の暗号資産交換業者における個人口座のうち、預かり資産額が10万円未満の口座は、80%以上を占めるとされている。また、利用者の86%が、短期的な売買差益ではなく、長期的な値上がりを期待して、取引を行っているというデータもある。
このデータが示すのは、多くの個人投資家が、暗号資産を、生活に支障のない小口の資金で、長期的な視点を持って、保有しているという実態だ。SNS上で見かける、極端な成功談や失敗談は、あくまで一部の目立つ事例であり、多くの利用者の実態とは、必ずしも一致しないという点を、冷静に、そして客観的に認識しておく必要がある。
- 一攫千金を狙う、投機的な取引が中心だと思い込む
- 極端な成功談や失敗談を、実態の全体像だと誤解する
- 多くの利用者が、小口の資金で長期保有している
- 短期売買ではなく、長期の値上がり期待が主流を占める
暗号資産と向き合う、現実的な3つの視点
ここからは、氷河期世代が、暗号資産と現実的に向き合うための、具体的な視点を紹介する。
ブロックチェーン技術そのものへの理解を深める
暗号資産に投資する上で、当サイトが繰り返し伝えたいのが、価格の値動きだけでなく、その根底にある「ブロックチェーン」という技術そのものへの理解を深めることの重要性だ。ブロックチェーンとは、取引記録を、多数のコンピューターで分散管理する技術であり、中央管理者を必要とせずに、データの改ざんを困難にする仕組みを持つ。ビットコインは、このブロックチェーン技術を活用した、最初の暗号資産として登場した。
値動きだけを追いかけるのではなく、その資産が、どのような技術的な裏付けを持っているのかを理解することは、SNS上の煽り情報に流されず、自分自身の頭で判断する力を養う上で、有効な手段になる。技術的な理解が深まれば、価格が短期的に下落した局面でも、その技術の長期的な可能性を踏まえた、より冷静な判断がしやすくなる。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 分散管理 | 単一の管理者ではなく、多数の参加者で記録を共有する |
| 改ざん耐性 | 過去の取引記録を、後から書き換えることが極めて困難 |
| 透明性 | 取引履歴が、誰でも確認できる形で公開されている |
ステーブルコインとの違いも、あわせて理解しておく
暗号資産と一括りにされがちだが、当サイトが区別して理解しておくべきだと考えているのが、ビットコインなどの一般的な暗号資産と、「ステーブルコイン」と呼ばれる種類の暗号資産の違いだ。ステーブルコインは、米ドルなどの法定通貨と、価値が連動するように設計された暗号資産であり、ビットコインのような大きな価格変動を、意図的に抑える仕組みを持つ。主に、暗号資産取引所間での送金や、決済手段として利用されることが多い。
投資対象として値上がりを期待するビットコインなどの暗号資産と、価格の安定を目的とするステーブルコインでは、その役割が全く異なる。ニュースなどで「暗号資産」という言葉を目にした際には、それがどちらの種類を指しているのかを、区別して理解する習慣を持つことをおすすめしたい。
暗号資産への向き合い方を確立した実例
ここで、暗号資産との向き合い方を、試行錯誤の末に確立した人物の実例を紹介したい。この人物は、当初、SNSで話題になっていた情報に強く影響され、まとまった資金を、複数の暗号資産に一気に投じてしまい、その後の急落で、大きな含み損を抱えることになった。この苦い経験から、暗号資産への投資額を、根本的に見直すことを決めた。
その後、資産全体のうち、失っても生活に支障のない、ごく一部の金額に限定して、ビットコインとイーサリアムという、代表的な銘柄のみを、長期保有する方針に切り替えた。「一攫千金を狙うのではなく、あくまで資産全体の中の、小さな一部として捉え直したことで、価格変動に振り回されなくなった」と、この人物は静かに振り返っている。取引所選びについても、金融庁登録済みの、セキュリティ体制がしっかりした業者に絞り込んだという。
複数銘柄への集中的な資金投入
SNSの情報に影響され、まとまった資金を一気に投じた。
資産全体のごく一部に限定
失っても生活に支障のない金額まで、投資額を縮小した。
代表銘柄の長期保有を継続
価格変動に振り回されない、落ち着いた向き合い方を確立した。
税制面での特殊な扱いも、理解しておく
暗号資産に投資する際、当サイトが特に注意を促したいのが、税制面での取り扱いだ。日本国内において、暗号資産の売却によって得た利益は、株式投資の利益とは異なり、原則として「雑所得」に分類され、他の所得と合算した金額に応じた、累進課税の対象になる。株式投資であれば、利益に対して一律約20%の税率が適用されるのに対し、暗号資産の利益は、所得が多いほど、より高い税率が適用される可能性がある。
この税制面での違いを理解しないまま、大きな利益を得た場合、想定以上の納税負担に直面する可能性がある。暗号資産に投資する際は、こうした税制面の特殊性も、あらかじめ理解しておくことが重要だ。
取引所選びで確認すべき、セキュリティという視点
暗号資産に投資する上で、当サイトが見落とすべきではないと考えているのが、暗号資産交換業者(取引所)選びにおける、セキュリティという視点だ。過去には、国内外の取引所において、不正アクセスによる暗号資産の流出事件が、複数発生してきた歴史がある。こうした事件は、投資対象そのものの価値とは別に、取引所というインフラの安全性が、極めて重要な要素であることを示している。
具体的には、日本国内で、金融庁への登録を受けた、暗号資産交換業者を利用することが、基本的な安全対策になる。また、資産の管理方法として、インターネットから切り離された環境で保管する「コールドウォレット」の採用状況や、二段階認証といったセキュリティ機能の充実度も、取引所を選ぶ際の重要な判断材料になる。価格の動向だけでなく、こうした取引所の信頼性についても、事前に確認することを、強くおすすめしたい。
- 手数料の安さだけで、取引所を安易に選んでしまう
- 金融庁への登録状況を、確認せずに利用してしまう
- 金融庁登録済みの、信頼できる取引所を選ぶ
- コールドウォレットの採用状況等を、事前に確認する
相続や資産承継における、暗号資産の取り扱い
暗号資産に投資する際、意外と見落とされがちなのが、相続や資産承継における取り扱いだ。暗号資産は、パスワードや秘密鍵といった情報がなければ、遺族であっても、資産にアクセスすることができない場合がある。株式や預貯金のように、金融機関を通じて所在を確認する仕組みが、暗号資産には整っていないケースも多く、適切な情報共有がなされないまま資産を保有し続けると、万が一の際に、家族がその資産の存在すら把握できないという事態が起こり得る。
暗号資産に投資する場合、家族に対して、少なくとも「どの取引所に、どの程度の資産を保有しているか」という情報だけでも、あらかじめ共有しておくことをおすすめしたい。パスワードそのものを共有する必要はないが、資産の存在自体が、家族に伝わる仕組みを整えておくことが、責任ある資産管理の一環だと言える。
SNSで飛び交う言説への反論
よくある質問
Q. 暗号資産に、いくらまでなら投資してよいか?
A. 一律の正解は存在しないが、失っても生活に支障のない、ごく一部の余剰資金にとどめることが、基本的な考え方になる。
Q. NISA口座で暗号資産を購入できるか?
A. 現状、NISA制度の対象商品には、暗号資産そのものは含まれていない。暗号資産関連の投資信託等については、個別に確認が必要だ。
Q. ビットコイン以外の暗号資産にも投資すべきか?
A. 初心者のうちは、時価総額が大きく、比較的情報も多いビットコインやイーサリアムといった、代表的な銘柄から、検討することをおすすめしたい。
Q. 暗号資産の税金は、どう計算すればよいか?
A. 原則として雑所得に分類され、確定申告が必要になる場合がある。詳細は、税理士や国税庁の情報で、あらためて正確に確認することをおすすめしたい。
Q. 暗号資産の価格が急落した場合、どう対応すればよいか?
A. 慌てて売却するのではなく、当初決めた投資方針に立ち返り、長期的な視点で、冷静かつ判断することが望ましい。
Q. 取引所は、どのような基準で選べばよいか?
A. 金融庁への登録状況や、コールドウォレットの採用、二段階認証といったセキュリティ機能の充実度を、事前に確認することをおすすめしたい。
Q. 暗号資産の情報は、家族に伝えておくべきか?
A. パスワードそのものを共有する必要はないが、資産の存在自体は、少なくとも家族に伝えておくことが、責任ある資産管理につながる。
暗号資産と向き合うために意識したい3つの視点
暗号資産関連の投資信託という、間接的な選択肢
暗号資産に直接投資することに、心理的なハードルを感じる場合、当サイトが紹介しておきたいのが、暗号資産関連の投資信託や、上場投資信託(ETF)といった、間接的な投資手段だ。こうした商品は、証券口座を通じて、株式や投資信託と同じような手続きで購入できるため、暗号資産取引所に、新たに口座を開設する手間を省くことができる。こうした間接的な手段も、暗号資産という資産クラスに触れる、一つの現実的な選択肢になり得る。
ただし、こうした投資信託等にも、信託報酬などのコストがかかる点や、原資産である暗号資産の値動きを、必ずしも完全に一致した形で反映するとは限らない点には、注意が必要だ。直接保有と間接保有、それぞれのメリット・デメリットを比較した上で、自分自身の投資スタイルに合った方法を、選択することをおすすめしたい。
| 保有方法 | 特徴 |
|---|---|
| 直接保有(暗号資産取引所) | 自分で秘密鍵等を管理する必要がある |
| 間接保有(投資信託・ETF等) | 証券口座で完結し、管理の手間が少ない |
結論:極端な意見に流されず、データで冷静に判断する
ビットコインの日次リターンのボラティリティは、米国株式市場と比べて明確に高く、実際の利用者の多くは、小口の資金で長期保有しているという、データに基づいた確かな実態がある。「必ず儲かる」という煽りにも、「絶対に危険だ」という全否定にも流されず、客観的なデータに基づいて、自分自身にとって適切な向き合い方を冷静に判断することが、氷河期世代にとって、最も現実的な姿勢だと言える。
今日からできる第一歩として、暗号資産に興味がある場合は、まず本記事で紹介したデータを、もう一度確認してみてほしい。その小さな確認こそが、極端な意見に流されない、冷静で確かな、良い判断の出発点になるはずだ。